入学試験

2025年1月13日

試験――中学入試、高校入試、大学入学共通テスト(旧センター試験)。これらは誰にとっても人生の大きな節目です。しかし試験は結果だけが全てではありません。その過程で得られる努力や学びは、結果を超えた価値を持っています。今日は私自身の経験や仏教の教え、さらに科学的な知見も交えながら、試験に向き合う心構えについてお話しします。

1. 努力を「見える化」し、集中力を高める

学生時代、私は日本史の年号や単語を覚えるためにひたすらノートに書き、声に出して繰り返しました。また、ストップウォッチを使い、「今だけ集中しよう」と極めて集中する時間を意識的に作りました。この短時間の集中が、不安に負けないための大きな助けになりました。

さらに、勉強時間を表にして「見える化」しました。1日何時間勉強したのか、どれだけ積み重ねたのかを数字で記録することで、「これだけやったんだ」という自信が生まれ、不安を軽減できました。このような方法は、自己効力感（self-efficacy）の向上に大きく役立ちます。アルバート・バンデューラ（Bandura, 1977）の理論によれば、自己効力感が高まることで、目標達成への意欲と能力が増加するとされています。

2. 結果がどうであれ、勉強は無駄にならない

試験では、どれだけ頑張っても思い通りの結果が得られないことがあります。私も試験後、「あれだけ努力したのに」と悔しさで涙が溢れたことがありました。しかし、その時の努力が無駄だったとは思いません。

脳科学の研究によると、努力して得た学びは、長期的な脳の成長に寄与します。学習や復習の過程で新しい情報を取り入れることで、脳内の神経回路が強化されます（Hebb, 1949）。また、「努力を重ねた経験」は、他の課題に取り組む際の粘り強さや課題解決能力にもつながります。試験の結果がどうであれ、その過程で得られた知識や習慣は、人生を豊かにする大切な資産となるのです。

3. あなたがあなたの代表である

試験は、他の誰でもない「あなた自身」が主役である場です。仏教では「自己を拠り所とせよ」という教えがあります。つまり、自分自身が自分の道を切り開く存在であり、責任を持つべき存在であるということです。他人と比べる必要はありません。あなたの努力、あなたの挑戦が、あなたの人生を作るのです。

心理学的な観点から見ても、自分の行動や努力に対して「主体性」を持つことは非常に重要です。デシとライアン（Deci & Ryan, 1985）の「自己決定理論」によれば、自律性や内発的動機づけが高い人ほど、困難を乗り越える力が強くなり、長期的な達成感を得やすいと言われています。

4. 悔しさを糧に変える

私は試験で失敗し、悔しい思いをした経験があります。その時は自分の力不足を痛感し、挫折感でいっぱいでした。しかし、仏教の教えにある「諸行無常（しょぎょうむじょう）」――全てのものは変化していくという真理を思い出し、「この悔しさも一時のもの。次への糧になる」と考えました。

また、心理学者キャロル・ドゥエック（Carol Dweck）の「成長思考（Growth Mindset）」の研究によれば、失敗を学びの一環と捉えることで、挑戦への意欲が高まり、より良い結果を生む可能性が高まることが示されています。悔しい経験を糧とすることが、未来を切り開く鍵になるのです。

5. 「大丈夫」と自分に言い聞かせる

試験に向かうとき、不安や緊張で押しつぶされそうになることがあります。そんな時は、「大丈夫」と自分に言い聞かせてみてください。言葉には力があります。「大丈夫」と口に出すだけで、不安が少し和らぎ、自分を信じる気持ちが湧いてきます。

言葉が感情や行動に与える影響についての研究（Schnall et al., 2008）では、ポジティブな自己対話がストレス軽減や集中力の向上に寄与することが示されています。「大丈夫」と言い聞かせることは、心の安定を保つための重要な技術です。

6. 試験当日の不安と心配事を乗り越える

試験当日は、不安や心配事がつきものです。私も試験当日に雪が降らないかを心配し、交通機関が乱れるのではないか、寒さで集中できなくなるのではないかと頭を悩ませたことがありました。

しかし、仏教の「一切皆苦（いっさいかいく）」――この世の苦しみは乗り越えるためにある、という教えを思い出しました。不安そのものを消すことはできませんが、「今、自分ができること」に集中することで、不安を乗り越える力が湧いてきます。試験当日は全てをコントロールすることはできませんが、しっかり準備を整え、与えられた時間に全力を尽くしましょう。