年末が近づくと、「家や心を整理したい」と思う人が多いのではないでしょうか。一年を振り返りながら、「部屋を片付けたい」「モヤモヤした悩みも整理したい」と考えるのは、ごく自然なことです。しかし、実際には、物を捨てることも、心の中の執着を手放すことも簡単ではありません。
「断捨離」という言葉の意味を振り返ってみましょう。「断捨離」という言葉は、ヨガの修行法に由来しています。ヨガの思想では、「断行(だんぎょう)」「捨行(しゃぎょう)」「離行(りぎょう)」という考え方が重要視されます。
- 断行:必要のないものを「断つ」こと
- 捨行:持っている不要なものを「捨てる」こと
- 離行:物への執着から「離れる」こと
これらを実践することで、身の回りをシンプルにし、心の中も穏やかにしていくというのが、ヨガの修行の一つです。この思想を日常生活に応用したのが、「断捨離」という整理術です。日本では、整理収納アドバイザーのやましたひでこさんが、この考え方を基に提唱しました。
つまり、「断捨離」は単なる片付けのテクニックではなく、物との向き合い方を見直し、心の執着を手放すことの一環ともいえます。
仏教でも、「執着」が心の苦しみの原因であると説かれています。執着とは、物や考え、人間関係、過去や未来に対する強いこだわりです。この執着が、不安や後悔、迷いを生み、心を重くします。
たとえば、
- 「あのとき、もっと頑張ればよかった」
- 「もし将来失敗したらどうしよう」
こういった思いが、頭の中をぐるぐる巡り、心を縛りつけてしまうことはないでしょうか?
「これを捨てられない」「どうしても忘れられない」という気持ちがあると、それを「悪いこと」と感じてしまうかもしれません。でも、仏教では、そのような「悩みや執着を抱えた自分」を否定するのではなく、「そのままの自分を受け入れること」が重要だと教えています。
プリンストン大学の研究では、散らかった空間が脳に余分な負担をかけ、ストレスホルモンの分泌を増加させることがわかっています。たとえば、机や部屋が散らかっていると、「片付けなければ」というプレッシャーを感じたり、気が散ってしまったりすることはありませんか?一方で、整理された空間では注意力が高まり、心が落ち着くという結果が出ています。
心理学では、過去の失敗や未来の不安を何度も考えることを「ルミネーション」と呼びます。このルミネーションが、不安やストレス、不眠の原因になることがわかっています。「今、この瞬間」に意識を向けることで、過去や未来への執着を減らし、心の健康を保つことができます。
「リサイクル」という選択肢を考えてみてください。リサイクルは、物をゴミにせず、新たな命を与える行動です。リサイクルを意識することで、「ゴミにせず誰かの役に立てた」「環境に良いことをした」という前向きな気持ちが生まれます。
断捨離は、物や心を整理し、自分を見つめ直す大切な時間です。すべてを一度に片付けようとする必要はありません。一つずつ、できることから始めることで、少しずつ心も軽くなります。
- 物をゴミにせず、誰かに役立てる方法を探してみましょう。
- 悩みや執着を抱えることは自然なこと。それを受け入れ、自分に優しくしてあげましょう。
一年ももう僅か。穏やかにお過ごしください
南無阿弥陀仏
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